TOP > マーケット分析 > 『マーケット分析』 「ゴルフウエア市場...

『マーケット分析』
「ゴルフウエア市場 vol.3」 商品企画の“次”を模索する

update: 2011/04/18

1ページ2ページ3ページ次のページへ >
「PERTEX」を使った「アダバット」

「PERTEX」を使った「アダバット」

「PERTEX」を使った「アダバット」

2003-2004年頃、女性プロゴルファー宮里藍選手のデビューが契機となって、現在に至るゴルフのファッション化が本格化し始めた。従来のスポーツメーカーが作っていたゴルフウエアは――顧客層の年齢やマインドが高かったこともあり――機能重視で、ファッション性の重要度はあまり高くなかった。うら若き女性プロゴルファーというモデルが登場し、グリーン上で着せ替え人形のように新しいゴルフウエアを着てプレーする、今までなかった目新しい映像が既存ゴルファーの価値観を一変させた。2000年代後半まではファッション性がどんどん盛り込まれて、ゴルフウエアは着実にオシャレ度を増していった。その一方で、機能性も標準装備のものとして認識されるようになった。

ゴルフウエアのファッション化のきっかけを作ったのは女性プロゴルファーだったが、実際にファッション要素を商品企画に取り入れていったのはアパレルメーカーだった。得意のファッション分野のノウハウを活かし、機能性に偏りがちだった当時のゴルフウエアとの差別化を進めていった。

過去、いくつか見てきたアパレルメーカーやデザイナー発の新興のゴルフウエアブランドには共通した点がある。ブランドがデビュー間もない時はファッションとしてのゴルフウエアを意識するあまり、またそれほど機能素材に造詣が深くないこともあり、デザインや色目に比重が偏る傾向が強かった。最初はそれでもエンドユーザーは許してくれた(今もそうだが流行のゴルフウエアを買うのはビギナーが多かった)のだが、プレー経験を積んでいくと徐々にモノを見る目が養われてくる。企画担当者もそのことに気付き始め、ファッション性が主体のブランドでも機能素材を採用するケースが少しずつ増えていった。

さらに2010年代に入り、商品企画の動向が変わり始めたようである。ファッション性と機能性をかなり高いレベルで両立させようとし始めた印象を受ける。ここ数年にヒットしたブランドを見ると、例えば「23区スポーツ」「ヒールクリーク」「パーリーゲイツ」「ダンスウィズドラゴン」などは常にそのデザイン性やファッション性がゴルファーに支持されてきた。しかし最近になればなるほど、機能性の裏付けが重要度を増していることも確かだ。11年秋冬の展示会では、機能素材の説明、機能タグの表示は特に珍しいものではなくなっている。

実は6-7年前まで、アパレル系ブランドでは商品に機能タグを付けることに消極的だった。展示会で機能素材の説明はするが、店頭に並べるときは(あまりデザイン的に優れているとはいえない、あるいはブランドタグが見えにくくなる)機能タグを外すことが多かった。ゴルフウエアがスポーツメーカーとファッションアパレルの領域の重なる部分で市場になっている故、2つの価値基準が出来ていたのかも知れない。あるいは流行と共に商品企画も変遷するファッションだから、数年で企画の方針が変わっていったのかも知れない。