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合繊メーカー、2019年春夏シーズン展まとめ(下)
国内市場の環境保全志向はマイナーな存在

update: 2017/12/27

環境保全を意識した 機能性素材提案も徐々にだが 増えている(東レの展示会より)

環境保全を意識した
機能性素材提案も徐々にだが
増えている(東レの展示会より)

合繊メーカーの2019年春夏シーズン展示会。第3回目は、環境保全──“エコ”を意識した素材を取り上げる。主要な素材メーカーを取材した限りでは、日本国内市場においては、こうした環境保全志向の機能素材はまだまだ少数派である。主力顧客の1つである国内のアウトドア関連ブランドからの受注──ニーズが低調であるためだ。その半面、国外顧客からの発注は堅調である。

海外向けでは堅調な需要

厳然たる事実として、国内アウトドア市場では、環境保全志向の素材に対する関心は低いのが現状だ。反対に、国外市場――特に北米や欧州市場においては、リサイクルに代表されるような環境保全志向の機能素材が注目されている。

各社の名誉のために述べておくと、決して環境保全志向の機能性素材を開発・提案していないわけではない。が前述の通り、国内アウトドア市場では、ニーズが少ないのが現状である。

昨今の国内の主要素材メーカーの商況に関しては、おしなべて海外市場へのアウトドア向け素材──代表的なものは、ナイロンの高密度織物──が堅調に推移している。これは“エコ”を配慮した素材が主流ではないが、国内市場に比べ関心度が高いのも事実である。

一例では、帝人フロンティアがリサイクル糸を使用したテキスタイルの提案を進めている。“フッ素フリー”のアウトドア(あるいはスキーなどのウインター向け)素材が主流になるが、“撥水機能”の急速な低下は如何ともしがたい面があるのは事実。撥水剤の「C8」から「C6」へトレンドが移行したことは記憶に新しいが、昨今はフッ素フリー素材のニーズが急速に増えているらしい。

少し方向性は異なるが、東レは2019年春夏シーズン向けの展示会で、全体の40%の素材で植物由来の原料「エコディア®」(PTT複合繊維)=長繊維を使用した。国際標準基準等による、PTT繊維の製品が「タイプⅠ環境ラベル」(日本で言う、エコラベル)が認定されたのは、世界で初めてだという。

加えて、“マイクロプラスチック”──環境中に存在する“微細”なプラスチック──への懸念が急速に高まっているようだ。環境保護団体の主張が影響しているようだが、例えば“起毛”加工などにより、微細なプラスチック繊維が環境中へ拡散することを懸念する考えのようである。

スポーツビジネス上では、採算性が重視されるため、なかなか環境保全志向の機能性素材──原価が高くなる──がメーンになることはなかなか難しい。利潤を得てこそのビジネスなので、この辺りは環境保全とのバランスを鑑み、今後の重要課題の1つと考えるべきだろう。(続く)