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『マーケット分析』―― アウトドア市場の成長の鍵握る?
「山ガール」の実像

update: 2011/01/31

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「マーモット」。山ガールをイメージしたスタイリング

「マーモット」。山ガールをイメージしたスタイリング

「山ガール」の実像

デサントのアウトドアブランド「ホールアース」が11年春夏シーズンで休止する。百貨店を主販路にメンズとレディスを販売し年配層の支持を集めてきたが、「年配の市場が落ち込んでいるため売り上げが伸び悩んでいたのだという。したがって今後は、機能性を前面に押し出した「マーモット」でアウトドア市場を開拓していくことになる。

大手シンクタンクの数値を見ると、今年もアウトドア市場はプラス成長という見通しを立てている。しかしこれが実態に近い予測だとすると、前段の年配層の落ち込みという分析が矛盾してくる。別のアウトドアメーカーに市況を聞くと、むしろ年配層の顧客は安定しているという。若い人――と言っても30・40代が中心――の参入が増えていることは確かだが、年配層が安定した分野であることも確かなようだ。

となると、「ホールアース」の苦戦要因は別のことが考えられる。1つは百貨店売り上げの大幅減。08年のリーマンショック以降、百貨店の主要顧客である年配層がお金を使わなくなった。「ホールアース」は年配層を主顧客にしていたので、このことが原因だと予測することはできる。もう1つは同ブランドのマーチャンダイジングが顧客ニーズとずれていた可能性だ。購買層そのものは変わらないが、顧客のマインドが若返り、従来の商材に魅力を感じなくなっていた。同ブランドでも商品企画見直しの努力を続けたが、ついに売り上げは伸びなかった。デサントは「ホールアース」の休止後、高機能で機能美を強みにできる「マーモット」でアウトドア市場を再び開拓する。「マーモット」は20・30代に人気のあるブランドだが、百貨店顧客からも支持を集められるかどうかは未知数だ。この辺りの方針がうまくいくかどうかについては、疑問を抱かざるを得ない。

百貨店のスポーツ売り場そのものが根本的に見直されている。残りの既存ブランドが存続できるという保証はない。高コスト体質からなかなか脱却できないでいる百貨店では、年配層向けのアウトドア商材の重要度が下がってきたのだろうか。

一方でデサントは今秋から、「デサント」ブランドで「DUALIS」(デュアリス)というアウトドアラインをグローバル展開する。日本のほか、アジアや欧州でも販売する世界統一モデルである。3年後の2013年シーズンに国内外で売上高20億円(小売りベース)を目指している。販路は専門店、百貨店、セレクトショップ。高感度でタウンユースのアウトドアウエアを企画するとみられる。「マーモット」とも異なるし、「ホールアース」の穴埋め商材でもない。

少し話の本筋から外れるかもしれないが――昨年からの傾向だが、ほかのアスレチック(競技)ブランドとアウトドアのテイストが同じ傾向というケースが見られるようになった。「DUALIS」はもちろんのこと、「デサント」の韓国ショップはアウトドアを切り口にしている。ヨットブランドの「ヘリーハンセン」は今春から、アウトドアテイストの新ラインを市場投入する。反対に「マーモット」ではスキーウエアテイストのウエアを作り、それがスキー流通で売れているというケースもある。「ザ・ノースフェイス」(TNF)でもスキーウエアテイストのアイテムが企画されている。