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『注目パーソン・インタビュー』
デサント、田中嘉一・取締役マーケティング部門長

update: 2011/06/20

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アウトドアは「マーモット」、欧州は「デュアリス」

強化分野の1つ、アウトドアでは「ホールアース」を、11年春夏シーズンを最後に休止する。こちらもゴルフウエア「ミラ・ショーン・スポーツ」同様、採算性が悪くなっていたためだ。百貨店スポーツ売り場を主戦場にしてきたが、今後は「マーモット」でカバーしていくことになる。ただし、「ホールアース」の顧客を追いかけることはないという。「マーモット」のブランドの立ち位置がぶれてしまうからだ。

欧州市場向けでは、「デュアリス」が核になる。お披露目も今年2月に開催された「ispo11」の会場だった。11年秋冬はトライアル、本格展開は12年春夏の見通し。「CPカンパニー」「ストーンアイランド」「モンクレール」といった高感度なカジュアルブランドと対抗できるブランドに位置付けようとしている。上代価格もハイエンドモデルで6-9万円と高めの設定だ。

「欧州ではスポーツ流通以外のところで勝負しようと考えている」

既存のスポーツブランドとは一線を画した展開になりそうである。

「私の仕事は社員の意識を変えること」

マーケティング部門に変わり、プラスに働いたことがある。ブランド間の壁がなくなったことだ。従来はアスレチック、ゴルフ、ウイメンズ・カジュアルとカテゴリー別に事業部が分かれていた。それをフラットな組織にしたことにより、ブランド間の交流が増えた。そのキーワードが「クロスファンクショナルチーム」。「横断型機能チーム」とでも言おうか、特定の機能性によって行う社内コラボレーションである。

「『クロスファンクショナルチーム』は互いに相性が合うなと各ブランドが思えば話し合いを持つという不定期に集まるグループ。すでに『コウノエベルト』や姿勢補正下着の『シセイスト』で動き始めています。『ヒートナビ』や『サンスクリーン』のような素材開発の横軸はあったが、すでに出来上がっている機能を持つ『シセイスト』を複数のブランドで応用・販売することはあまりありませんでした。これは顧客から見れば当たり前のことで、例えばゴルファーはゴルフウエアの下に『シセイスト』を着てもいいわけです。販路の共有というか、複数のブランドの展示会で提案することができるようになる」

デメリットは「営業が問屋的になること」と語る。売れるブランドについつい力を入れてしまうという弊害だ。ブランドの採算性を見る必要もあるので、「営業にはブランド販売の優先順位をある程度伝えておく必要もあるだろう」と解決策を話す。ブランド間の意思疎通という問題は、「ナイキ」「アディダス」「アシックス」「ミズノ」といった単一ブランドで展開するスポーツメーカーにはない悩みだ。

目下、ブランドの立ち位置やリブランディングという縦軸と、ブランドの拡販・新規チャネル開拓という横軸から、バランスのいいブランドポートフォリオのあり方を模索している。

「(「マンシングウェア」のツータックパンツ全廃のように)わずかでも1つでも成功事例ができると、これが加速度的に自信につながってきます。社員の意識を変えること、これくらいしか私のする仕事はありません」

そう謙遜するが、少しずつ、部門内の人的な流動性が高まってきたようである。東日本大震災後のゴールデンウイークに、社内の若いデザイナーや社員が中心になり被災地へボランティア活動に出かけたそうだ。その後まもなく、若いスタッフの意見で支援Tシャツを作ろうという計画がボトムアップで実現した。社員を対象に販売する限定品だが、その収益を支援金として拠出する計画である。「被災地支援は長丁場なので、この輪が広がっていけば...」と期待を寄せる。

社員の意識が変化してきた兆しかもしれない。

JR新宿駅構内に張られた「One Thing by Munsingwear」の特製ポスター

JR新宿駅構内に張られた「One Thing by Munsingwear」の特製ポスター

JR新宿駅構内に張られた「One Thing by Munsingwear」の特製ポスター

田 中 嘉 一(たなか・よしかず)氏 1957年生まれ。79年4月、デサント入社。02年4月、第1事業部デサントマーケティング部長。06年4月、執行役員。07年6月、取締役第1事業部長代行。10年4月、取締役マーケティング部門長。今月22日開催の株主総会で常務に就任予定。