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ミズノ 取締役研究開発本部長 樋口良司氏
“快適にプレーできる”機能性を追求

update: 2012/07/30

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スポーツで培った技術を他分野に生かす

日常シーン向けの提案商品「じつは!腹筋くん」

日常シーン向けの提案商品「じつは!腹筋くん」

新素材を活用することで、付加価値のあるスポーツ用品を開発することができる。最近の典型例は、軟式バットの「ビヨンドマックス」だろう。

「市況はデフレですが、高級品も一部で残して機能性を追求していく必要もあるのではないかと思います。野球の軟式バットの『ビヨンドマックス』が良い例。それまでは軟式バットというと1万5000-1万6000円くらいが相場だったが、『ビヨンドマックス』以降は3万円前後のものが売れるようになった。課題は次に替わる商品が出てきていないということですが」

「社長から言われていることは、付加価値のある技術開発、健康・非スポーツ分野の売り上げを伸ばすこと。スポーツ以外の分野でも製品を開発しようという目的で“ミズノテクニクス”という社名にした経緯もあります」

競技分野で培った技術力を基に、全く別分野で製品化に漕ぎ着けた例がいくつかある。「ビヨンドマックス」にも使用されているカーボンファイバーを時計のベルトに採用したケースだ。カシオ計算機とのコラボで、時計の「G-SHOCK」のベルトを開発した。耐久性があり、「想定外の使い方をしてもベルトが切れて時計をなくさないような」新しいベルトを追求した。

「それまで『G-SHOCK』のベルトはウレタンがほとんどで、そのままだと加水分解により劣化しやすかった。そこで炭素繊維を使いベルトを作りました」

また、カーボン素材の応用ではないが、テレビを見ながら腹筋運動ができるイス「じつは!腹筋くん」や、体幹を鍛える機能を持ったオフィスでも使える「ゆらゆらクッション」など、日常生活シーンへ向けた開発商品も増えている。

開発の方向性は踊り場に来ている

昨今のスポーツ商材で共通している点は“軽量”だ。シューズもウエアも共通して、「軽くて着やすい、履きやすい」がセールスポイントになっている。

「軽くすることは良い事だが、その分の重量をどこへ配置するかがポイント。前から取り組んでいることだが、人と用具の接点の研究をもっとやらないといけない。例えば、ラケットのグリップ部分だとか…。良いものであることは当たり前。これからは“快適にプレーする”ことを重視した方がいいのではないか」

競技シーンでは、新素材開発という点で踊り場を迎えているようだ。

「以前は炭素繊維の新しい素材が出たら早い段階で当社へ紹介してもらえた。ところが最近新しいものがでてこなくなった感じがする。テニスラケットも一時ほどブームになっていないのでは。新しいラケットといっても何が変わったのか分かりにくい。ゴルフのシャフトも然り。これは新しい素材が出てこないことが大きな要因だと思う」

新素材の探求、快適性の追求など、スポーツの機能開発は新たな局面を迎えているのだろうか。

略歴
樋口良司(ひぐち・りょうじ)氏 1952年生まれ。75年3月、ミズノ入社。2000年3月、養老工場技術部部長。02年4月、ミズノテクニクス副社長。07年6月、ミズノテクニクス代表取締役社長。12年6月、取締役(研究開発本部・品質保証部担当)。