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スポーツ上場7社
オリンピックイヤーに臨む①「重要度増す国外市場」
収益のバランスがカギに

update: 2012/05/31

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今年は4年に1度のオリンピックイヤーだ。7月後半から8月にかけて、英国・ロンドンを中心に開催される世界的なスポーツ競技大会である。例年、オリンピックに関連した直接的な売上増はそれほどないが、スポーツ関連の各種媒体における露出度が高まり、エンドユーザーの関心が高まるという効果がある。既存のスポーツ愛好家というよりも、これから参入する新規顧客の開拓が期待できると言った方が適切だろう。従って、オリンピック競技そのものに対して関連する各スポーツメーカーは精力的に投資するが、短期的な売上増にあまり重きを置いていない。契約を交わしている各国代表のレプリカウエアの売り上げも局地的で限定的。むしろ市場が温まった今秋以降の商売に期待をかけているという現場の声をよく耳にする。いずれにしても節目の年であることは間違いない。2012年3月期の業績を受けて、スポーツ各社は今期(2013年3月期)をどのように迎えているのか。発表された決算関連資料を基に主要各社の方針をまとめた。

アシックス、海外が収益の柱に

国内のスポーツ上場6社は規模の大小はあるが海外市場での拡販を進めている。慢性的な円高の傾向で連結決算時に海外の売上高が目減りする影響は少なくないが、現地通貨ベースでは比較的堅調に伸ばしている例が多い。また売り上げだけではなく、利益面でも貢献している例をよく見掛ける。

海外展開が最も進んでいるのはアシックスだ。2012年3月期(2011年度)の決算で増収増益を達成した同社の海外売上高比率は62.7%(0.1ポイント減)。国内売り上げが回復したほか、円高の影響で93億円分が目減りしたこともあり比率は微減したが、連結売上のおおよそ3分の2を占めている。その内訳は米州(ブラジル含む)が590億円(1.0%減)、欧州が610億円(9.9%増)、オセアニアが102億円(2.0%減)、東アジア(中国、韓国、台湾)が132億円(4.6%増)。いずれも円換算の数値だが現地通貨ベースで見ると、オセアニアは5.0%減だが、規模の大きい米州(9.0%増)や欧州(15.3%増)は好調である。営業利益でも米州が37億円(20.7%減)、欧州が70億円(18.6%減)と減収傾向にあるが、収益両面で貢献していることが分かる。

米州の減益の理由は配送センターの建設費用や販促費の増加によるもの。欧州は販促費増に加え、強化中のリテイル展開の販管費が増えたことによるものだ。「欧州の営業利益率を意図的に12%辺りまで下げた(前年15.5%から当期11.5%へ)」(尾山基社長)という背景もある。これはほかの地域の営業利益率を10%にするという数値目標に倣ったものだという。各地域で収益バランスを良くする狙いがあるとみられる。

品目別では海外売上の約85%を占めるスポーツシューズをはじめ、ウエア、用具類すべてで増収を達成した。ウエアではアウトドアブランドの「ホグロフス」が貢献した。欧米市場でのけん引役はランニングシューズで、米州で515億円(0.8%増)、欧州で383億円(20.1%増)の売上規模がある。ランニングウエアも規模は66億円と小さいが15.1%増と増収を達成した。

連結の営業利益は原価の増加や販管費率の増加により減収したが、売り上げに占める比率は7.9%と依然、高い水準を保っている。今回の決算で収益に寄与したのは国内市場で、前年、前々年と減収だったが売上高1092億円(4.2%増)と回復した。これは主にアスレチック関連のシューズやウエアが増収したことによるもので、ランニング関連のシューズやウエアも増収を達成した。販促効果が実売とかみ合ったと分析している。

東アジアでは、中国が10億近い累損が減り通年で黒字化した。店舗展開など具体的な方策を今後詰めていく計画だ。韓国(6.5%増)、台湾(8.0%増)は増収だった。ランニングシューズが40%近いシェアを持つオセアニアはアスレチック関連を強化している。

ロンドンオリンピックでは現地のハイドパークに200坪の店舗を展開。ブランドの発信に力を入れる。通期も増収増益を計画。2015年度に連結売上高4000億円を目指す中期経営計画「アシックス・グロース・プラン(AGP)2015」の進捗状況については、「(売り上げの達成度が)63-64%と少し遅れたと思う」(尾山社長)と語るが、現時点で目標数値の変更はないという。