流通レポート 変容する大阪・梅田商圏
JR大阪駅北側に軸足移る
エリアの集客力がパワーアップ
update: 2015/06/23
1日平均240万人の乗降客があると言われる大阪・梅田駅。東京の池袋や渋谷駅に匹敵する一大ターミナルである。JR大阪駅ビルの再開発事業の一環で2011年5月4日、グランドオープンしたファッションビル「ルクア大阪」が1つのきっかけになり、2013年4月26日にはすぐ北隣に複合商業施設「グランフロント大阪」が開業し、従来の導線が一変した。商業施設の集積がJR大阪駅北側に軸足が移るとともに、梅田エリアの集客力がパワーアップした。
「グランフロント大阪」が3年目に突入
2013年4月26日、大阪・梅田にグランドオープンした複合商業施設「グランドフロント大阪」が3年目に突入した。1年目の売上高は計画の400億円に対し436億円、2年目は初めてのフルイヤーで444億円(1年目は約11カ月)だった。3年目も前年比を上回る推移だという。「ルクア大阪」と並び、梅田商圏を大きく変えた商業施設の1つである。今年4月2日には、旧JR大阪三越伊勢丹を居抜きで改装した「ルクア」の新館「ルクア イーレ」が新たにオープンし、エリアの集客力がさらに高まった。
東京の街は概して、訪れる客層と集積する施設に一定のテイストの共通点がある。OL・キャリアの新宿やヤング層の渋谷・原宿、ラグジュアリーの銀座などがその好例である。一方、大阪の街は原則ワンストップショッピングで、幅広い客層が集まり、様々な施設が集積する。その典型例が梅田商圏である。
百貨店は阪急うめだ本店、阪神梅田本店、大丸梅田店と3店舗が出店する。ファッション系商業施設に至っては、前述の「グランフロント大阪」や「ルクア」のほか、「ヘップファイブ」「阪急三番街」「ディアモール大阪」「エスト」などと、枚挙に暇がない。現在、阪神梅田本店の建て替え工事が始まっており、当分、梅田地区には“槌音がこだまする”ことになる。
着実に顧客を開拓
今年4月にオープンした「ルクア イーレ」は、一部でMD構成や過剰供給ではないかという懸念の声もあったが、現在のところは順調に推移しているようだ。特に少しずれて5月にオープンした9階の「梅田 蔦屋書店」の後押しが大きい。「ルクア イーレ」の集客力のアップで、周辺の「ルクア大阪」や「グランフロント大阪」もその恩恵を被っている。ちなみに「蔦屋書店」のオープンで、周辺の既存書店の売り上げは落ちていないという。効率的のいい巨大集客装置として稼働しているようだ。
少し前から指摘されていることだが、これからは同商圏内の施設同士ではなく、別々の商圏同士の競争だと言われる。その点で、タイプの異なる商業施設が集積した梅田商圏の集客力アップは、昨今の商業施設の在り方を示す参考事例と言えるだろう。毎日、大阪駅や梅田駅を利用するリピーターはもちろんの事、広域からも新規の顧客を集客している。
6年後の2021年秋には、新・阪神梅田本店が開業予定。今後もエリアの集客力が増す再開発事業や改装が続く。
(樋口尚平)