大丸心斎橋店「本館」が建て替えオープン
update: 2019/09/24
《情報アラカルト》
J.フロントリテイリングのグループ会社、大丸松坂屋百貨店が運営する「大丸心斎橋店」の「本館」(大阪市中央区心斎橋筋)が9月20日、建て替えオープンした。86年ぶりの本館の建て替えで、「Delight the World」(デライト・ザ・ワールド)がコンセプト。「リアル店舗として、ネットに負けない魅力のある館を目指す」(西阪義晴 店長)。
来店促すMD構築、定借契約が約65%占める“新百貨店モデル”
新しい「本館」は、延床面積が約6万6,000㎡(旧館は4万9,000㎡)、売り場面積が約4万㎡(同3万1,000㎡)で、規模が約35%拡大した。地上11階、地下3階の14層構造で、売り場は地上10階、地下2階の12層で展開する。総店舗数は368店。うち、新業態が47店、関西初出店が41店。また、1階の天井部分や移設したエレベーター周りには、旧館の建築設計を手掛けたウィリアム・メレル・ヴォーリーズ氏がデザインした内装の一部を移築・再現している。
売り場構成は、他社との差別化を意識するのではなく、「我々自身の価値を発揮・提供できることを重視した。大丸らしさを追求した」(西阪店長)。注目すべきは、売り場の約65%が定期借地契約であること(1−3階は従来の“売り上げ仕入れ”形態)。ファッションビルや郊外型商業施設では、かなり一般化している契約方式だが、百貨店で採用しているケースはまだまだ珍しい。1つのショップに十分な面積を提供し、ブランドの世界観を明確に発揮、発信してもらうことを狙った措置である。「取引先の力を発揮してほしいと考えたら当然、面積が必要になる。Win-winの関係を模索していったら、定借に落ち着いた」(同)。
一押しのフロアは、地下2階の「フードホール」。テイクアウトはもちろん、その場で食事することも可能なスタイルだ。従来、BtoBの展開だけだった企業にBtoC向けの新業態を開発してもらったテナントも出店している。また9階フロアには、インバウンド客を意識したスペースを設けた。
2019年度の売上目標は890億円
主力のファッション、アパレル関連テナントは、2-6階の中層階に集積している。前述の通り、1店舗当たりの面積が広く、アパレルに加えて服飾雑貨など幅広い品揃えのテナントが多いのも特徴だ。1階は化粧品・アクセサリー、2-3階はラグジュアリーブランドが集積するが、この辺りのフロアは百貨店らしい雰囲気だ。4-5階はレディスブランドを主体に編集。6階はメンズ関連が中心になっている。
定借のテナントが多いため、仮設ではなく、腰を落ち着けて十分に作り込んだ内装のショップが多い。照明の配置にも気を配り、高級感を演出している点も同店の新しい要素だ。3階フロアの一角には、「GINZA SIX(ギンザシックス)」(東京・銀座)で展開するファッションの自主編集売り場「SIXIEME GINZA」(シジェーム ギンザ)も出店している。2017年4月にオープンした「GINZA SIX」の経験や要素も、今回の本館に盛り込まれているようだ。
大丸心斎橋店(本館、北館、南館を含む)の2019年度(2020年2月期)の売上目標は890億円。本館は9月20日から来年2月の期末までの売り上げを加算する。北館は上期、南館は1年間の業績が対象だ。家賃収入が主体になる定借契約が約65%を占める本館を含んでいるため、3館の合算とは言え、「(890億円という)数値目標はかなり野心的」(西阪店長)だ。来たる2021年春には、「パルコ」を核テナントとした新しい北館がオープンする計画。1年半後に、大丸・大阪心斎橋店の完成形が姿を現す。
(樋口尚平)