阪神梅田本店、第Ⅰ期棟オープンから1年──
新コンセプトのレディス売り場が成果を挙げる
update: 2019/06/25
《店頭レポート》
阪神梅田本店の第Ⅰ期棟がオープンから丸1年を迎えた。Ⅱ期棟が完成し、全館グランドオープンするのは2年後の2021年だが、その新生・阪神百貨店の基礎になるのがⅠ期棟だ。主力商材の1つ、レディスファッションにおいても、新しい試みが実行され、着実に成果を挙げているようだ。
新しい客層──西梅田OLを取り込んだフロア編集(中見出し)
従来、阪神梅田本店はミセスに強い百貨店だった。60-70代が主要な年齢層で、社内では次世代の顧客を開拓する必要性が指摘されていたという。建て替え工事を機に、懸案だった若い世代を取り込む試みに着手した。ターゲットにしたのは“西梅田OL”。「毎日を幸せにする百貨店」というテーマの下、西梅田のOLに日常使いしてもらえる売り場編集を考えた。
レディスファッションのフロアは主に3-6階。特徴的な試みが見られるのは、3-5階部分だ。従来の平均的な百貨店売り場は、各フロア完結型の編集が主流だったが、今回は全フロア共通のコンセプトを作り、感度・感性を同調させた点が特徴だ。扱う商材はフロアごとで異なるが、感性が同じであるため、1人の顧客が複数階を回遊するという“買い回り”を促す狙いがあった。
留意した点の1つは、買いやすい商材を集める事。デーリーユースを意識して、廉価な商品を取り揃えた。また、各フロアの北側──JR大阪駅側の一角に、「イベントスペース ステージ」を設け、最短では1週間単位で、ポップアップショップを展開した。来店しやすく、買いやすくする工夫である。
南側のフロアは従来型のブランドごとに区切ったショップのレイアウトだが、北側の一角は、イベントスペースが核になっていて、その周りを囲むようにして、壁面にショップが並んでいる。各フロアの編集切り口も異なっていて、3階は「ウエルネス」、4階は「リアル・クローゼット」、5階は「リラナチュール」とシーン別に分けられている。
20代後半から40代半ばの女性が増加
こうした新しい施策の結果、従来は来館が少なかった20代後半から40代半ばの女性客が増加したという。4階を主体としたレディスファッションの初年度売上も、予算比をクリアした。常時、イベントスペースに出店されるポップアップショップは衣料品に限定せず、スイーツや生活雑貨など、同店が強みにする幅広い商材を扱う。切り口は同じ感度・感性の商材。西梅田OLの生活スタイルをトータルにカバー、提案するイメージだ。
興味深いのは、食品や家具など非アパレルのセレクトも、婦人服バイヤーが担当する点。不慣れなことが多いため、かなり大変な作業のようだが、スキルアップにつながるほか、顧客の好みを広く知ることができるメリットも大きい。
アパレル系で健闘しているテナントは、「ビアズリー」「インディヴィ」「アニエスベー」など。元「ジーンズハウス」で現在は「パンツショップ」に名称を替えている自主編集売り場は、フロアの核になっているという。
新規の20代後半から40代半ばの女性客が増えた結果、平日の夕方以降、週末の来館客数が増加した。平日の昼間はミセス層がメーンで、仕事が終わる夕方以降は西梅田OLの来館数が増える。週末は西梅田OLがカップルで訪れ、カフェなどで長居するケースも増えているようだ。
1年が経過し、新規顧客のニーズや嗜好の傾向が見えてきた。2年目はこれらに磨きをかけることに力を入れる。2021年のグランドオープンへ向けて、MDの精度を高めようとしている。
(樋口尚平)