第8回リファッション0704 2016シンポジウム開催
サスティナブル・ライフへの提言
update: 2016/07/05
ファッションビジネス学会リファッション2016実行委員会が主催・企画・運営を行う第8回リファッション0704 2016シンポジウムが2016年7月2日に開催された。このシンポジウムはファッションビジネス学会リファッション研究部会の活動の一環として、毎年7月4日前後の週末を「0704=お直しの日」として、今年で8年目の開催となる。
今年のテーマは『サスティナブル・ライフへの提言~短命な流行はいらない。共感できる確かさを~』をテーマに、サスティナブル(持続可能な)という観点からファッションを見直すための基調講演や実践発表などが行われた。
今年の基調講演には(株)IMA代表取締役の水野誠一氏が登壇。水野氏が昨年上梓した著書「否常識のススメ」をもとにエシカルでサスティナブルな衣服文明/文化を目指すをテーマに講演を行った。フォルクス・ワーゲンや東芝など大企業の不祥事の陰にある倫理観欠落と同様にファストファッションの裏に潜む闇、年間20億着の衣料品が捨てられている現実を再認識し、消費文化から使用文化へ、成長という考え方から成熟化とという考え方へシフトしていこうという提案をされた。
実践発表の1人目にはアッシュ・ペー・フランス(株)の坂口真生さんが登壇。合同展示会「ルームス」で自身が立ち上げた「エシカルエリア」やこれまで携わってきたエシカル関連の事例を紹介しながら、エシカルを知ってもらうためにはデザイン性が必要不可欠であることを説いた。
2人目に登壇したのは縫製マッチングプラットフォーム「ヌッテ」を運営する(株)ステイト・オブ・マインド取締役の村田大輔さん。国内の縫製工場の現状や「ヌッテ」の立ち上げ経緯や現状を発信した。
3人目はホームソーイング全国小・中・高作品コンクールでリクチュール賞を受賞した岐阜市立東長良中学校2年生の所 美玲さんと指導した長尾利恵教諭が登場。受賞作品のデザインテーマや制作時に大変だったことや見どころなどを解説した。
4番目には文化服装学院卒業生の野中優樹さんと日本アンドロイドの会から小暮敦彦さん、鈴峰きりさんが登場し「次世代ファッションビジネス―2015年度 デジタルコラボ研修報告―」を行った。
5人目は栃木県那須にある大麻博物館の高安淳一館長が登壇し、『日本古来の麻 機能性自然素材への回帰』をテーマに、高機能自然繊維としての大麻について、大麻の歴史や神事との関係性などを伝えた。
この他にナカノ株式会社/株式会社アン・コトン/株式会社丸井グループ/YKK株式会社/ふろしき研究会/工学院大学環境マネジメント工学研究室/ファッションビジネス学会/他によるポスタープレゼンテーションが行われた。
食糧廃棄問題と同様に衣料品も誰の手にも渡らず廃棄されている現状は、日本に限らず世界でも起きている。一方で消費者の価値観も変化し、消費するだけでなくシェアやリースなど、物を持たない生き方も出てきている。そんな状況であることを改めで知ることで、ファッションに新しい価値を与えていく必要を感じるシンポジウムであった。
(ファッションライター 苫米地香織)