ワールド　2013年3月期　第2四半期　連結決算
増収するも営業損失を計上
販売計画と実勢に齟齬

update: 2012/11/29

ワールドの2013年3月期第2四半期連結決算は、販売機会のロスが軽減されたことにより増収を達成したが、販売スタッフの人件費や物流費の増加、天候不順により販売計画に狂いが生じたことなどが影響し、利益面では損失を計上した。売上総利益の減少が損失の大きな要因で、また販売促進費の圧縮が進まなかったことも影響した。しかし、既存店ベースでは売り上げが伸びており、販売施策の基本路線は間違っていない。

機会ロス軽減も在庫過多に

同社はかねて仕入れと販売のバランスを厳密に追求し、高い売上総利益を確保してきた。2008年9月に発生したリーマンショック後は、在庫ロスを避けるため仕入れを抑制する傾向が強くなっていた。再び在庫ロスから機会ロスの軽減へ軸足を移し始めていたが、第2四半期ではそれが少々行き過ぎたという。

十分な在庫を抱え、販売ロスを軽減する体制を整えたが、4月・6月・9月のまとまった売り上げをつくる時期に計画通りの数値を達成することができなかった。最も影響が大きかったのは9月の3連休で、台風の到来もマイナス要因だった。また、6－7月の夏のセールが盛り上がりに欠けたことも売り上げが伸び悩んだ原因だ。アイテムでは昨年好調だったニットが今年は苦戦。また、百貨店のミドルアッパーを中心にセール期が後ろへずれ込み、販売計画が二転三転した影響もあったという。

在庫の確保、販売体制の強化により店頭スタッフの人件費が増加。予測よりも増収幅が大きくなかったため、売上総利益が十分に確保できなかった。その結果、売上総利益率も3ポイント減少し、営業損失を計上するに至った。

しかし減益は一時的なものと分析しており、通期では増収増益を目指す。ちなみに上期（4－9月）の既存店ベースの売り上げは103.8％と前年同期比を上回っている。

「BCOM」「FCOM」業態の比率が高まる

品目別では「その他」を除けば、「婦人服」「紳士服」「子供服」「服飾装身具」それぞれで増収を達成した（表1参照）。業態別では「卸」を除く全カテゴリーで増収だった。主力は「アンタイトル」（103.1％）、「インディヴィ」（100.8％）などの「百貨店SPA」業態で、売り上げの32.9％を占めている。

「グローブ」（112.1％）や「インデックス」（104.9％＝既存店ベース）、「ジ・エンポリアム」（104.6％）などの「BCOM」（バイイングコモディティ）業態の売上に占める比率は25.5％。「ハッシュアッシュ」（97.4％、既存店ベースでは100.4％）や「サンカンシオン」（110.4％）、「ザ・ショップ TK ミクスパイス」（120.0％）などの「FCOM」（ファッションコモディティ）業態の売上比率は21.6％。「BCOM」と「FCOM」を足すと47.1％になり、主力の「百貨店SPA」よりも多くなる。今後の成長業態であり、期待される業態でもある。

「フラクサス」（109.3％）、「シューラルー」（124.4％）、「オペークドットクリップ」（129.3％）などの「ストア」業態は2ケタ増。新事業のECサイト「ワールド　オンラインストア」は155.7％と好調な推移だ。13年春からは、アウトドアブランドの「ラフマ」アパレル、米国のレディスカジュアルブランド「フリーピープル」の販売もスタートする。

財務指標は一時的に悪化

損失を計上した影響で、財務指標が一時的に悪化している。ROAおよびROEはマイナスになった。棚卸資産が増加したことにより、商品回転率がやや悪くなった。自己資本回転率が伸びているが、これは自己資本の額が減少したことによる影響だ。

有利子負債は966億8800万円（前期は889億9200万円）。期首（2012年3月末時点）では977億5800万円なので、約10億円減少している。大幅な増額は、優先株式を借入金へ組み替えたことによる影響だという。D/Eレシオは、自己資本が減少した影響で悪化した。

下期（10－3月）は売上計画の適正化を進め、在庫の適正化に力を入れる。店頭人件費の削減と同時に、プロパー消化率の向上、売上総利益の増収を目指す。

（ファッションライター　樋口尚平）