三陽商会と「梅田 蔦屋書店」が「100年コート」で協業
“TIMELESS”キーワードにエンドユーザーへアピール
update: 2017/11/14
《店頭レポート》
三陽商会と大阪・梅田の「梅田 蔦屋書店」が協業し、三陽商会の「100年コート」の世界観を発信・販売するエンドユーザー向けイベントを開催している。「梅田 蔦屋書店」の呼びかけで実現したイベントで、“TIMELESS”がキーワード。同書店が扱う「普遍性を持つ知識が得られる書籍」と、長く着られる「100年コート」の価値観やコンセプトが合致し、実現に至った。
共通点は“普遍性”“ものづくり”
大阪・梅田の複合商業施設「ルクア1100(イーレ)」内に店舗を構える「梅田 蔦屋書店」は、かねて“ものづくりの背景”が語れる個性的な商材を紹介・販売してきた。その分野は幅広く、衣料品のほか食品や香水、文具など多岐にわたる。今回、三陽商会の「100年コート」に注目したのは、その普遍性やものづくりに対するこだわりなどブランドのコンセプトが、「蔦屋書店」のそれと合致していたため。「“長く着ていくコート”という点に共感・共鳴した」(梅田 蔦屋書店デザインコンシェルジュ、竹岡紗代氏)。「本の知識も蓄積されて人格を形成する面がある。(時間をかけ、自身に合ったコートに着こなしていくという)『100年コート』との共通点を感じた」(同)。
同イベントは「TIMELESSな大阪」という副題を掲げる。イベントスペースに普遍性を持つコートと同様、変わらない大阪の下町の風景写真を飾ることで、「100年コート」のコンセプトを来場者に感じてもらおうという試みだ。展示する写真は関西在住の写真家、片岡杏子氏が撮影したもの。その写真群を背景に「100年コート」を展示している。
11月10日からスタートした同イベントの反応は良い。岡山など遠方からの来客も少なくないようで、購買につながっているようだ。「イベントの主目的は『100年コート』の哲学を伝えること。また、蔦屋書店との協業という点に興味を持たれた方も多い」(三陽商会 事業本部 コーポレートビジネス部、西野祐子課長代理)。「多くの方に見ていただくというよりは、この世界観や価値観に共感いただける方に発信する」(梅田 蔦屋書店、星野尚子イベント・媒体リーダー)スタンスのようだ。
商品の哲学、世界観の発信を重視
今回は“大阪”を切り口にしたイベントだが、今後は「例えば福岡など、その町や地域と協業した形でエンドユーザーと触れ合える機会を増やしたい」(西野課長)という。「100年コート」を媒体にして、価値観を同じくする各地域のファンを開拓していく考えだ。
「100年コート」は日本国内の工場で生産している。エジプトのギザ綿を輸入し、紡績、糸染め、製織から撥水加工まで国内の協力工場で行い、自社工場で縫製し仕上げている。語れる“うんちく”は盛りだくさんだが、「その部分は敢えて強調しない」(三陽商会事業本部 コーポレートビジネス部コート企画グループ、石田和孝 主任)スタイルを採っている。流行ですぐに消える物ではなく、長く着てもらえるコートを目指して、最初は哲学やコンセプト、世界観の発信・周知に重点を置いている。
「多いのはご夫婦。また、若い方の成人式や入社祝いにプレゼントされることも多い」(石田主任)という「100年コート」。その購入目的を見ると、同社が発信するブランドの哲学や考え方が、エンドユーザーへ徐々に浸透しつつあるようだ。そのほか、北米を中心に――現地の高級百貨店を主体に少量ずつだが輸出ビジネスも進んでいる。
ブランドビジネス、差別化できる商品の提供という販売面のほかに、「100年コート」は、「『TIMELSEE WORK』を標榜する同社として、国内工場において技術を継承していく役割」(同)も担っている。大量生産・大量消費の価値基準とは正反対のブランド施策だが、ルーツのアウター商材を再度、ブラッシュアップする目的で、「100年コート」ブランドを大切に育てていこうとしている。
(樋口尚平)