三陽商会、2016年12月期 本決算
当初計画を下回り減収に、損失を計上
新しい中期3カ年計画を策定
update: 2017/02/15
《財務分析レポート》
三陽商会の2016年12月期連結決算は、百貨店を主体とした衣料品の販売不振の影響が大きく、計画を下回り減収となった。利益面は売り上げ低迷のほか、値引き販売の増加や在庫処分、撤退ブランドの在庫評価損などの計上もあり、損失に至った。また、新たに3カ年の中期経営計画「Sanyo Innovation Plan 2017(SIP 2017)」を策定した。
主力の百貨店チャネルが苦戦
長らく主力ブランドだった「バーバリー」の取り扱いが終了し、新しいブランド体制で臨んだ2016年シーズン。トップライン=売上高が減少することは織り込み済みだったが、新ブランドや百貨店ブランドが満足に売り上げを確保できなかったため、連結売上高は当初計画700億円を下回る676億円(30.6%減)に留まった(表1を参照)。併せて、在庫の値引き処分が発生したことで、売上高総利益率(粗利益率)が減少した。また新ブランドおよび中止ブランドの在庫評価損、約28億円を計上した影響も大きく、損失幅が拡大した。
部門別では、百貨店チャネルが苦戦した。EC・通販が増収を達成した。ブランド事業別では、マッキントッシュ事業が200億円規模に手の届くところまで拡大。今期は200億円台を目指す。ポール・スチュアート事業は減収。エポカ事業およびラブレス事業は堅調だった(表2を参照)。
財務面では、商品回転率や交差比率、資本回転率などが軒並み減少した。有利子負債は92億円で、D/Eレシオは0.18倍と正常値にある。手元資金(手元流動性資金)が180億円あるため、実質の有利子負債はゼロである。前売りが回復すれば、安定した財務基盤になる余地は十分にある。
中計、2019年度に売上高650億円、中期では800億円を目指す
新たに策定した3カ年の中期経営計画「Sanyo Innovation Plan 2017(SIP 2017)」では、最終年度の2019年に連結売上高650億円、営業利益20億円を計画する。中期的には、売上高800億円、営業利益率5%(40億円)、ROEは5%を目指す。成長のエンジンに期待するのはECおよび直営店で、2019年度には併せて売上比率26%(2016年度は16%)まで拡大させる計画だ。2016年度の売上比率はECが6%、直営店が10%。2019年度にはそれぞれ12%、14%にまで拡大する。
また新中計では、“マーチャンダイジングの標準化・高度化、サプライチェーンの適正化”により、2019年度には粗利率50%(2016年度は41.8%)を目指す。シーズンMDを細分化し、数量の設計や期中追加仕入の活用などを全ブランドで実施するという。ECでは年間24%の成長を見込む。強化商材には、祖業である“コート”を中心とした“コーポレートブランド事業”を据える。2019年度に25億円の売上高を計画する。
通期見通しは、再建途上にあるため、減収・損失幅を減らす段階に当たる。連結売上高は630億円(6.8%減)、営業損失が30億円、経常損失が28億円の計画だ。
(樋口尚平)