財務分析レポート
主要上場アパレル企業、上半期決算まとめ
SPA化、海外進出組がプラスに
update: 2015/11/30
主要上場アパレル企業の上半期決算が出揃った。2月期および3月期と決算期が異なるため、比較する期間は異なる。主要6社の上半期決算、および参考資料として、ファーストリテイリングの2015年8月期連結決算を挿入している(ワールドは非上場)。百貨店を主販路にしてきた企業が苦戦傾向にあり、SPA業態あるいは国外進出を進めている企業がおしなべて堅調だった。
6社中、増収増益は2社のみ
今回、取り上げたアパレル企業は7社で、第2四半期決算が6社(オンワードホールディングス、TSIホールディングス、レナウン、ワールド、良品計画、ユナイテッドアローズ=順不同)である。ファーストリテイリングの2015年8月期連結決算は本決算だが、売上規模が国内最大であること、また話題性も高いため、参考情報として表に加えた。ワールドとファーストリテイリングが国際会計基準、IFRS(イファース)を採用している。そのほかの5社は日本会計基準である。補足事項はまとめて、表の欄外に列挙した。
上期に健闘したのは、良品計画とユナイテッドアローズだ。ともに増収増益を達成した。良品計画は、国内改善と海外の伸張が収益改善に貢献した。海外の期末の店舗数も308店(11増、4減)と増加した。売上高総利益率(粗利率)が0.9ポイント改善し、販管費率が0.7ポイント減少したことで、収益性が高まった。商品回転率は0.3ポイント減の2.9とやや減少した。財務面の懸念材料は見当たらない。ROAおよびROEは2ケタ台、自己資本比率も70%台をキープしている。
ユナイテッドアローズも、前年同期比に比べ利益率が微減したものの、収益は高い水準にある。価格政策の失敗などで収益性がトーンダウンしたが、上期決算では修正の跡がうかがえる。商品回転率が0.2ポイント改善した。販管費率は1.5ポイント削減した。財務面は良品計画同様、当面の懸念材料は見当たらない。
各社、明暗分かれる
売上規模では、ファーストリテイリングが頭抜けている。海外展開が進んでいることも後押しになっている。国内のユニクロ事業は、売上収益7,801億円(9.0%増)、営業利益1,172億円(10.3%増)で過去最高の業績を達成した。海外ユニクロ事業も好調で、売上収益6,036億円(45.9%増)、営業利益433億円(31.6%増)と大幅な増収増益だった。
百貨店を主販路にしてきた国内を基盤にする企業は苦戦傾向だ。オンワードホールディングス、TSIホールディングス、レナウンの3社はともに減収減益(レナウンは損失計上)だった。ワールドは収益体制の改善途上で、ブランドのスクラップ、店舗閉鎖による影響が大きかった。しかし、営業利益を確保し、再浮上のきっかけをつかみつつある。
通期で増収を計画しているのは、上期に増収を達成した2社のみ。ワールドは非上場のため、通期見通しを公表していない。オンワードホールディングス、TSIホールディングス、レナウンは事業の立て直しを優先する。ワールドも同様に、再建期間に位置付けている。ファーストリテイリングはグローバルトップ2社(INDITEX、H&M)の背中が見えてきた。良品計画、ユナイテッドアローズは引き続き、収益拡大に力を入れる。
(樋口尚平)