財務分析レポート
ファーストリテイリング 2015年8月期
国内外が好調で増収増益、過去最高収益に
海外ユニクロ事業がけん引役
update: 2015/10/15
「ユニクロ」を展開するファーストリテイリングの2015年8月期 連結決算は、主力の「ユニクロ」事業が国内外ともに好調で、増収増益を達成した。国内ユニクロ事業は売上収益7,801億円(9.0%増)、営業利益1,172億円(10.3%増)で過去最高の業績。海外ユニクロ事業も好調で、売上収益6,036億円(45.9%増)、営業利益433億円(31.6%増)と大幅な増収増益だった。
世界規模でEコマース事業を売り上げの30-50%へ拡大
同社の柳井正 代表取締役会長兼社長は2015年8月期連結決算のポイントについて、「海外ユニクロ事業、国内ユニクロ事業の健闘、ジーユー事業の成長、J Brandやシステム関連等の減損損失161億円の計上」を挙げた。海外ユニクロ事業では、「グレーターチャイナ」(中華圏)および韓国の業績が好調だった。その半面、米国事業の赤字幅が拡大し、課題点になっている。
国内ユニクロ事業は第4四半期(6-8月)に苦戦したが、通期では過去最高収益を達成した。14年秋冬シーズンの主力商材が好調だった。別業態「G.U.」を展開するジーユー事業では、売上収益1,415億円(31.6%増)、営業利益164億円(270.0%増)と増収増益だった。セオリー事業、コントワー・ド・コトニエ事業は減益。J Brand事業は赤字が続いている。
今期は引き続き、海外ユニクロ事業を強化する。各地域で出店を続けるが、米国では効率の良い店舗に集約するほか、Eコマースを収益改善のテコ入れ策として力を入れる。通期では「ユニクロ」の海外店舗数(958店計画、160増)が国内(846店計画、5増)を上回る計画だ。
中期的には、世界規模でのサプライチェーンの確立、インターネットを活用した新しい産業の創造を目指す。また、デジタルイノベーションにより世界規模で、Eコマース事業の連結売上比率を現状の約5%から30-50%へまで高める計画だ。「顧客が商品を買う時、リアルとバーチャルの違いを気にしなくなるのではないか」(柳井 会長兼社長)という市場変化を想定した上での施策だ。
円安など売上原価が上昇する傾向にあるが、ある程度の値上げは仕方がないと判断している。「品質を維持するためには値上げせざるを得ない。今の日本の状態を考えるとむやみに上げることはできないが、16年春夏も多少、上げざるを得ないだろう」(柳井 会長兼社長)。
商品回転率、交差比率が微減
国際会計基準(IFRS)に移行して2期目の決算。前期との財務数値の比較が可能になった。売上総利益率(粗利率)は50.5%と高い水準を維持している。商品回転率は3.4、交差比率は171.7でいずれも微減したが、安定した数値だ。
営業利益率が9.8%、税引前利益率が10.7%。当期利益の比率も増加している。粗利率の低下は国内ユニクロ事業の粗利率低下による影響。販売管理費率の増加も国内ユニクロ事業の販管費増による影響だ。
棚卸資産(在庫)の増加は、海外ユニクロ事業の店舗数増加、ジーユー事業およびセオリー事業の拡大に伴うもの。国内ユニクロ事業では減少した。資本回転率は改善している。資産合計税引前利益率(ROA)および親会社所有者帰属持分当期利益率(ROE)はいずれも増加した。
通期の連結業績見通しは売上収益1兆9,000億円(13.0%増)、税引前利益2,000億円(10.7%増)。ベンチマークにしている、INDITEX(ZARAなどを展開)は2015年1月期の売上収益が181億1,700万ユーロ(2兆4,639億円、1ユーロ=136円で換算)、税引前利益32億4,500万円(4,413億円、同)。H&M ABは2014年11月期の売上収益が1,514億1,900万スウェーデン クローネ(2兆1,198億円、1クローネ=14円で換算)、税引前利益258億9,500万円(3,625億円、同)。その背中が視野に入ってきた。
※柳井氏のコメントは、同社ウェブサイトのIR動画から抜粋。
(樋口尚平)